『ぬらりひょんの棲む家』というタイトルから連想するのは、妖怪が棲みつく不気味な屋敷のイメージだろう。
しかし全133話まで進んだ物語を俯瞰すると、この作品が本当に描いているのは「家」という建物に取り憑くものではなく、家族という関係の中で世代を超えて受け継がれていく「支配欲」そのものだと気づかされる。
不眠症の大学生・和宏が実家に帰省するところから始まる本作は、縦型ショートドラマアプリでの実写化も果たした人気サスペンスで、前半と後半で主人公の立ち位置が反転する構成が最大の見どころになっている。
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全裸の男「沼尻」が家族を支配する第一章の異常さ
物語の導入部、和宏は実家に祖父母の姿が見当たらないことに違和感を覚える。
両親に尋ねても不審な反応しか返ってこず、やがて家の中に全裸の中年男・沼尻が潜んでいることに気づいてしまう。
沼尻は「義男くん、これ飲んでもらおうか」「きょ・う・は・だ・れ・に・し・よ・う・か」といった不気味な台詞とともに、和宏の家族に対する支配を強めていく。
妹・美月にも魔の手が伸び、家族全員の前で和宏を辱める映像が流されるなど、閉鎖された家という空間の中で心理的な支配がエスカレートしていく様が丁寧に描かれる。
この第一章は6話(12話分)で完結し、「全ての真相が明らかになる」という引きで幕を閉じる。
和宏自身が「支配する側」へと変貌する第二章の恐ろしさ
本作の本当の面白さは、実はここから先にある。
第一章の終わりから時間が飛び、成長した和宏と美月の関係を描く第二章では、和宏の様子が明らかに変わっている。
妹を溺愛するあまり、美月に近づく男性を次々と排除しようと画策し、飼い猫を手にかけたと思われる描写や、周囲の人間関係を裏で操作する冷酷な行動が目立つようになる。
かつて自分たち家族を苦しめた沼尻という「支配者」を排除したはずの和宏が、気づけば沼尻と同じように、大切な人を守るという名目で他者を意のままに動かす存在になっているのだ。
この反転構造こそが、タイトルの「ぬらりひょんの棲む家」が持つ本当の意味だろう。
ぬらりひょんは特定の誰か一人の姿ではなく、家族という閉じた関係の中で、支配する者から支配される者へ、さらには支配される者から次の支配者へと乗り移っていく「役割」そのものなのではないか。
「妹を守る」という言葉に隠された和宏の独占欲
物語が進むにつれ、和宏の行動原理は「妹を守る」という建前と、実際には「妹を誰にも渡したくない」という独占欲の間で揺れ動いていることが見えてくる。
美月に近づく人物への警戒が、単なる兄としての心配を超えて執拗な排除工作へと発展していく描写は、沼尻が家族に強いていた支配と地続きの構造を持つ。
幼少期に沼尻から受けた恐怖体験が、和宏の中で「愛情は支配することでしか示せない」という歪んだ学習として刷り込まれてしまったと読むこともできる。
独自視点・今後の予想
41話付近で「明かされる”ぬらりひょん”との出会い」という引きが用意されていることから、和宏と沼尻の間には偶然以上の因縁があると考えられる。
沼尻がなぜあの家を選んだのか、和宏一家に何を見出していたのかが明らかになれば、和宏が沼尻的な支配者へと変貌していく過程がより必然性を持って描かれることになるだろう。
また、美月自身がいつまで兄の支配に気づかずにいられるのか、気づいたときにどう抗うのかも今後の大きな見どころになりそうだ。
まとめ
『ぬらりひょんの棲む家』は、侵入者による家族支配という王道ホラーの導入から一転、支配された側がやがて支配する側に回っていくという恐ろしい円環構造を持つ作品である。
家に棲みついているのは妖怪ではなく、家族という関係そのものが抱える支配と依存の連鎖なのだと気づいたとき、この作品の読み方は大きく変わるはずだ。
気になった方は、peepで無料公開されている第1話からぜひチェックしてみてほしい。
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