『食糧人類Re: -Starving Re:velation-』は、人類が「天人(あまひと)」に食べられることを誉れとして生きる未来の日本を描いた、『食糧人類 -Starving Anonymous-』の続編です。
この記事では天人の正体を全7巻・最終回まで踏み込んで考察しますので、未読の方はネタバレ注意でお読みください。
先に結論を書くと、天人に知性が見えないという読者の違和感は的を射ていて、作中で崇められていた天人は本物の支配者ではなかった、というのが本記事の主張です。
あまひと様の正体は「宇宙人」の一言では片づかず、地上の天人と「真の天人」を分けて見ることで初めて筋が通ります。
物語全体の流れと結末については、食糧人類Re:ネタバレ考察|天人が滅んでも人類は神を手放せなかったで整理しています。
食糧人類Re:の天人とは|人を食べる「神」の基本設定
舞台は前作から数百年が過ぎた日本で、人々は巨大な生物を天人と呼んで崇めています。
学校で選ばれた生徒が天人のもとへ送られることは「出荷」と呼ばれ、本人も家族も祝うべき名誉とされています。
ただ、読者は序盤の10話ほど、その天人の姿をはっきり見せてもらえません。
無料分の感想には、天人が人間なのか別の何かなのか分からないという声があり、10話のコメント欄にも「あまひとさまって何者」という疑問が書き込まれていました。
10話のコメントには、天人はどんな姿なのかと興味津々という声もありました。
答えの一端が見えるのは11話で、コメント欄は天人を宇宙人だと受け止める反応で埋まります。
前作と同じように宇宙人の類いだろうと読む人もいれば、巨大な姿を想像していたので驚いたという人もいました。
この時点で読者がつかめるのは、前作と同じ系統の宇宙生物らしいというところまでです。
本当の答えは最終7巻まで持ち越されるので、ここからは疑問が出た順に追っていきます。
天人の呼び方と信仰|あまひと様が神道風に祀られる世界
作中の「天人」は「あまひと」と読み、人々は敬意を込めて「天人様」と呼びます。
1話や2話の時点で読者が戸惑うのは、まだ姿も見えない相手のために、周囲が当然のように体の一部まで差し出そうとすることです。
2話には、なに天人様って、という素直な驚きが書き込まれています。
14話には、神道のデザインで描くなよというコメントもあり、天人の祀られ方が和風の儀礼として描かれていることが分かります。
宗教団体のような信仰だと書いたレビューもあり、読者には怪物というより信仰の対象として先に印象づけられます。
さらにレビューによれば、天人の亡骸を人間が口にするという描写まであります。
食べられるだけでなく、食べる側にも回ることで、天人は生活と信仰の中に深く組み込まれているわけです。
ここで大事なのは、読者が「天人とは何か」を知る前に「天人をどう扱う社会か」を見せられている点です。
神の中身より先に信仰の形を見せる順番が、後の種明かしを効かせる下準備になっています。
「知性の欠片もない」|13話のコメント欄に集まった天人への違和感
13話で天人が生徒たちの前に現れると、コメント欄の空気は恐怖よりも困惑に傾きます。
目立つのは、見た目の気持ち悪さと並んで、この生物が賢そうに見えないという指摘です。
ある読者は「知性の欠片も感じない」と書き、別の読者は時間をかけて人間を洗脳してきた割に知的さがないのはなぜかと首をかしげていました。
異星から来るための宇宙船を作れそうにないという、前作から続く疑問を挙げた人もいます。
19話にも、どう見ても人間の方が賢いという書き込みがありました。
レビューにも、高知能生物ならほかの飼育方法があったのではないかという疑問や、なぜ化け物でしかないものに生贄を捧げるのか分からないという感想があります。
味にうるさいのに賢く見えないという点も、読者を困らせました。
この社会では出荷の候補を食味スコアで評価していますが、13話には、こいつらに肉質という意識があるのかと疑うコメントがあります。
15話には、前作は味なんて気にしていなかったくせに、という突っ込みも見られました。
こうした声を整理すると、読者の引っかかりは大きく三つに分けられます。
一つ目は、文明を持つ種族には見えないという外見の問題です。
二つ目は、これほど大規模な洗脳を計画できる頭脳があるように思えないという支配力の問題です。
三つ目は、天沢たちの反撃で命を落とす程度に、案外もろいという強さの問題です。
3巻では天人を死なせた罪で天沢たちが追われますし、18話には、天人の体力は案外低いのではという冗談まで出ています。
作りの甘さに見えるこの三つが、実は7巻の種明かしで一度に説明されるのが本作の面白いところです。
前作のカマキリとの関係|『食糧人類』の巨大生物と天人は同じ生物なのか
次に多いのが、前作の怪物と同じものなのかという疑問です。
11話には「前作のカマキリみたいな宇宙人のことだよね」という確認のコメントがありました。
前作『食糧人類』に出てくる人食いの巨大生物は、昆虫の幼虫のような体型やカマキリのような体型など、いくつもの姿を持っています。
もともとは別の星に住み、資源を食べ尽くして地球へ来た存在で、前作の最後には山引の策によって全滅したとされました。
そのためレビューには、絶滅したと思っていたのに生きていたのかと驚く声が複数並んでいます。
一方で姿については意見が割れていて、13話と15話には形が違うのはなぜかというコメントと、進化したのではないかという見方が同居しています。
前作の面影が残っていると感じた人もいれば、前作から姿が大きく変わったと書くレビューもありました。
結論から言うと、天人が前作のカマキリ型の子孫だと作中で明言されているかどうかは、今回調べた範囲では確認できませんでした。
ただし、来歴の語られ方は前作とよく重なります。
7巻の種明かしを紹介した複数の感想記事によると、天人の祖先は母星の食糧危機から地球へ飛来し、人類を食糧に選んだとされています。
マンガペディアの解説でも、天人は自分の星の資源を食べ尽くして地球へ来た種族で、当初の計画が人間の反乱で崩れたあと、洗脳によって人間が自ら食料になる世界を作ろうとしたと説明されています。
講談社の7巻紹介文にも「シリーズを通じた謎がすべて繋がり」とあるので、前作の巨大生物と同じ流れを汲む種族だと読むのが自然だと考えます。
カマキリ型との直接の血縁については、あくまで予想として受け止めてください。
天人の実像|天沢大輝が「宮廷」で撮影した映像が暴いたもの
正体に迫る一つ目の山場は、6巻で天沢が単身「宮廷」へ乗り込む場面です。
天沢は天人に身を捧げる人々の列に加わり、7巻の紹介文が言う「驚くべき実像」の撮影に成功します。
62話のコメント欄には、撮ってくれと祈るような書き込みがありました。
では映像には何が映っていたのでしょうか。
最終回の感想を書いたブログでは、天人は人間が出産している化け物だと知った人々が暴動を起こした、と整理されています。
レビューにも「人から天人が産まれる」という驚きの声があり、68話には、どこから産まれたのかと戸惑うコメントがありました。
遠い星から来た高貴な神だと教えられてきた相手が、実は自分たちの体から生まれていたわけです。
洗脳された社会にとって、これほど都合の悪い事実はありません。
辻がこの映像を国民に流して世界を壊そうとしたのも、神の格を一瞬で引きずり下ろせる材料だったからだと読めます。
ただ、ここで明らかになるのは「神の素顔」までで、なぜそんな存在が神の座にいるのかという問いは残ったままです。
真の天人と地上の天人|天国への扉の向こうにいた本当の主
その問いに答えるのが、7巻の「天国への扉」です。
警視総監の榊千翔世は、映像を流すかどうかは見てから決めろと言って、天沢たちを地下の扉へ案内します。
扉の向こうに広がっていたのは、人類よりはるかに進んだ文明と、そこで暮らす異形の者たち、つまり「真の天人」でした。
万智音たちが驚いて、ではこれまで見ていた天人は何だったのかと問うと、榊はそれを「玩具」にすぎないと答えた、と感想記事では紹介されています。
別の感想記事でも、真の天人に似せた「人形」を人類に与え、無慈悲で残忍な神の位置に置いたと説明されていました。
ciatrの解説も「仮初の神」という言い方で、同じ構造を説明しています。
ここで、作中の「天人」という言葉は二つの存在に分かれます。
地上の天人は、宮廷にいて人を食べ、人々に崇められ、知性が見えない方です。
真の天人は、扉の向こうで高度な社会を築き、榊家を連絡役として使い、人類を保護区に住まわせている方です。
読者が13話で「知性がない」と感じたのは前者で、文明を築いたのは後者でした。
つまり、宇宙船を作れそうにないという指摘も、人間より賢そうに見えないという指摘も、地上の天人についてはそのまま正しかったことになります。
なお、「人形」が機械のような作り物なのか、育てた生物を指す言い方なのかは、人間が産むという話との関係も含めて確認できませんでした。
本記事では、真の天人が人類に与えた神、という意味で受け止めています。
真の天人がなぜそんなことをしたのか、それが悪なのかという議論には本記事では深入りせず、正体の整理に絞ります。
独自考察|天人に知性がないのは、神としての「仕様」だった
ここからは本記事の読みです。
天人の頭が悪そうに見えるのは描写の失敗ではなく、神として設計された結果だと考えます。
話が通じる相手なら、人間は交渉も説得も、場合によってはごまかしもできます。
しかし、涎を垂らして食べるだけの相手には、祈るか差し出すかしか選択肢がありません。
感想記事によれば、真の天人が人類に与えたのは、圧倒的に強く、理不尽で無慈悲な神でした。
その条件に賢さは入っておらず、むしろ賢くないことが「話し合いの余地がない神」を成り立たせています。
前作の巨大生物は、人間に謝罪や生贄を要求し、人を操るような知性を見せていたと紹介されています。
前作を読んだ人ほど、今作の天人に物足りなさを覚えたのは、この差があるからではないでしょうか。
もう一つ大事なのは、賢く見えない天人でも支配が成り立っていたという事実です。
レビューには、前作は一部の人間が怪物に支配される話だったのに、今作は世の中全体が狂気に満ちている、という比較がありました。
ciatrの解説でも、人類を管理する政府機関の宮廷庁が立ちはだかる存在として紹介されています。
序盤の敵が天人そのものより、学校や役所や隣人だったことを思い出すと、この読みは納得しやすいはずです。
出荷を決めるのも、教室で祝うのも、異を唱える者を追い詰めるのも、すべて人間の仕事でした。
48話には、こんなに強いのに天人には大人しく食べられるのは変だというコメントがありますが、強い人間が従っていること自体が、この仕組みの完成度を示しています。
17話にも、醜悪な造形なのに状況次第では人はそうなるのかもしれないと、変に納得してしまったという感想がありました。
見た目についても、同じことが言えると考えます。
レビューには、天人が凛々しくて優しく、苦しまないように食べてくれる神なら良かったのに、という感想がありました。
87話にも、天人が美男美女だったら人間の態度も変わったのかと笑うコメントがあります。
読者が抱くこの感想は自然ですが、美しい神であれば、人々は自分の意思で崇めているのだと言い訳ができてしまいます。
醜く、涎を垂らし、話も通じない相手を崇めているからこそ、信仰がどれほど人間の側で作られたものかが際立つのです。
天人の姿に予想を大きく裏切られたというレビューがあるように、この落差は作品の仕掛けとしてよく働いています。
3話には、こんな人間はアホだと思えること自体が今の教育のおかげだ、という鋭い感想もありました。
天人を賢く見えないと笑える私たちの感覚も、あの世界で育っていれば、きっと残っていなかったのだと思います。
天人に知性が必要なかったのは、考える役目を丸ごと人間の社会が引き受けていたからだと考えます。
天人の正体で残る疑問|最後に生き残ったのはどちらの天人か
最後に、正体の話として押さえておきたいのがラストの場面です。
ここまでの整理でも、すべての疑問が解けたわけではありません。
たとえば、前作で全滅したとされた巨大生物と、扉の向こうの真の天人が、どこで分かれた存在なのかは分かりません。
真の天人が培養肉の研究中に起こしたという生物災害が、前作の出来事を指しているのかどうかも、今回の調査では確かめられませんでした。
時系列を考えると想像が膨らむ部分ですが、ここは断定を避けて、読者それぞれの予想に任せたいと思います。
最終盤で滅びるのは、扉の向こうの真の天人です。
地上の天人も暴徒となった人々に襲われましたが、最後の場面では天人の赤ん坊が「神様」として拝まれています。
コメント欄でも、天人は絶滅していなかった、まだ世界の片隅で生きていると、この場面に反応する声が見られます。
つまり、高度な文明を持つ本物は消え、与えられた側の天人だけが細々と残ったことになります。
本物の支配者がいなくなっても拝まれ続けるのが「玩具」の方だという結末は、知性のない神で十分だったという読みとも合います。
この信仰の意味については親記事で詳しく書いているので、ここでは正体の整理にとどめます。
真の天人がウイルスに弱かった理由についても、親記事の「無菌の檻」の議論に譲ります。
まとめ|食糧人類Re:の天人は、知性を必要としない神だった
『食糧人類Re: -Starving Re:velation-』の天人の正体は、二段階で明かされます。
一段階目は、天沢の映像が暴いた、人間が産んでいる化け物という実像です。
二段階目は、天国への扉の向こうにいた真の天人が、人類に与えた神にすぎなかったという真実です。
前作のカマキリ型との直接の関係は確認できませんでしたが、母星の食糧危機から地球へ来たという来歴は前作とつながっています。
13話で読者が抱いた「知性の欠片もない」という違和感は、作品の欠点というより、7巻の真実を先取りした正しい直感でした。
この結末を知ってから13話を読み返すと、天人の描写の見え方はかなり変わるはずです。
天人の正体を踏まえて最終回をどう受け止めるかは、食糧人類Re:最終回はひどい?|賛否を分けたのは結末より速さだったで考察しているので、続けて読んでみてください。
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