『追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』のルーチェ・ルービスは、なぜクラインたちのパーティを追放されたのでしょうか。
表向きは「戦力外」でしたが、原作を読み直すと本当の理由は別の場所にあります。
この記事では追放の経緯、〈豪運〉の価値が理解されなかった理由、エルマと組んだ意味、そして今後の成長までを考察します。
〈豪運〉や幸運力の仕組み、重騎士との相性については『追放された転生重騎士 世界観・設定まとめ|重騎士と加護の儀を解説』で整理しているので、本記事では追放の経緯とルーチェの人物像に絞って掘り下げます。
原作小説の第一章、アニメでは第6話「道化師ルーチェ」から第1クール終盤までの内容に触れるため、ネタバレ注意です。
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ルーチェの追放劇|クラインとリースが突きつけた「戦力外」
ルーチェが初めて登場するのは、駆け出し冒険者が集まる都市ロンダルムの路上です。
原作では第十六話「道化師の少女」にあたり、アニメでは第6話「道化師ルーチェ」で描かれました。
当時の彼女は、剣士のクラインをリーダーとする三人組のパーティに所属していました。
残る一人は盗賊クラスの少女リースで、ルーチェは道化師として前に出て戦う役回りです。
事件のきっかけは、ダンジョン探索で出た市場価値二百万ゴルドの剣のレアドロップでした。
ルーチェが分け前を求めると、クラインは攻撃分散程度にしか役立っていないと切り捨てます。
ルーチェは五分の一から二十万、十万ゴルドへと遠慮がちに要求を下げていきますが、話はこじれる一方でした。
最後にクラインは十万ゴルド分の金貨を地面にばら撒き、それを拾って出て行けという態度を取ります。
それでもルーチェは剣の取り分はいらないから置いてほしいと頭を下げ、そこへ偶然居合わせたエルマが割って入るのが二人の出会いです。
表向きの理由は「攻撃スキルがなくレベルも上がらない」
クラインが口にした追放理由は、戦闘能力がなさ過ぎてレベルもまともに上げられないというものでした。
実際、エルマに見せたステータスでは【Lv:13】のF級冒険者で、攻撃スキルは〈ダイススラスト〉しかありません。
この世界は同格以上の魔物を倒さないと経験値が入りにくく、攻撃手段を欠いたビルドは成長が止まってしまいます。
ただし、そのスキルツリーの振り方はクラインの指示に従った結果だとルーチェ自身が訴えています。
クラインは提案しただけだと言い返しますが、育成方針を決めさせた側が育成の失敗を理由に追い出すのは、筋の通らない話です。
ルーチェ追放の本当の理由|二百万ゴルドの剣と分け前問題
追放の本当の理由がはっきりするのは、原作第三十三話「逃がした魚は(side:クライン)」です。
クライン視点で描かれるこの回で、彼は剣の分け前を欲しがらなければ置いといてやったのに、とこぼしています。
つまり本音は「役に立たないから」ではなく「一番レベルの低い仲間に大金を分けたくないから」でした。
戦力外という説明は、分配を拒むために後から持ち出された理屈にすぎません。
さらにクラインは、スキル振りに失敗した仲間を追い出したという噂が立つと街に居づらくなるとも計算していました。
エルマが勧誘してくれたおかげで、向こうから出て行ったことにできると喜んでいたわけです。
十万ゴルドを餞別だと言い直したのも、外聞を整えるための手切れ金だったと原作は描いています。
独自視点|豪運が呼んだ剣が、豪運の持ち主を追い出した
ここで注目したいのは、追放の引き金になった剣そのものです。
何度もダンジョンに潜ってようやく出たレアドロップは、ルーチェの〈豪運〉が効いていた可能性が高いアイテムです。
ルーチェ本人もその場で、自分のスキルのおかげだと嬉しそうに主張していました。
もしそうなら、彼女の幸運が呼び込んだ財宝が、彼女を追い出す理由になったことになります。
筆者はこの皮肉こそが、ルーチェ追放の構図の核心だと考えています。
幸運が生む利益は誰の目にも見えるのに、その利益が誰のおかげなのかは見えません。
見えない貢献は、分配の場面で真っ先に削られる側に回されるということです。
〈豪運〉の価値はなぜ理解されなかったのか|見えない確率と比較対象
〈豪運〉は隠しパラメーターの幸運力を底上げするスキルツリーで、ルーチェは特性スキル〈招きニャロン〉を持っています。
幸運力の仕組みそのものは『追放された転生重騎士 世界観・設定まとめ|重騎士と加護の儀を解説』で詳しく扱っているので、ここでは価値が伝わらなかった理由に絞ります。
理由1|低いドロップ率は数倍になっても体感しにくい
ドロップ率はあくまで確率なので、元の数値が低ければ数倍になっても「たまたま出た」と感じやすいものです。
クラインも、何度も潜ってようやくのレアドロップだとして、ルーチェのスキルが関係あるのか疑わしいと言っていました。
加えて〈豪運〉の説明文は、そこにいるだけで幸せを呼び込むといった曖昧な文言だと原作で説明されています。
効果が数字で示されない以上、価値が周知されていないのはこの世界ではむしろ自然な状態だと言えます。
理由2|最初からいたので「いない状態」を知らなかった
もう一つ大きいのは、比較対象がなかったことです。
ルーチェが抜けた後、クラインたちは普段なら二体狩れば何か落ちていたマタンゴを四体狩っても、ほぼ確定だと思っていた〈ヒール茸〉を一本も得られませんでした。
クラインにとっての「普段」は、すでにルーチェの幸運力込みの数字だったわけです。
ありがたさは失って初めて分かる、という言葉をそのまま物語にしたような展開です。
原作のエルマも、〈豪運〉は上級プレイヤーがレア狙いで探索する際には必須とまで言われたスキルだと考えており、追い出す人間がいること自体が信じられないと驚いています。
ゲームのように攻略情報が共有されていれば誰もが欲しがる人材なのに、情報のない世界では外れ扱いになってしまうわけです。
「レアモンスターで死にかけたから疎まれた」説は原作で成り立つか
幸運力はレアな魔物の出現率にも関わるため、前のパーティは危険な目に遭い続けたのではないかという見方もあります。
ただ、少なくとも追放の場面とクライン視点の回では、クラインの不満は分け前と戦闘での働きに向いていて、危険を理由にする台詞は見当たりません。
むしろクラインは安全に稼げる弱い魔物を好んで狩っており、レアモンスター説は原作の描写とはやや噛み合わない印象です。
興味深いのはリースの言葉で、彼女は元々そういう噂があったからルーチェを入れていたと漏らしています。
クラインたちは〈豪運〉の評判を知ったうえで勧誘し、それでも効果を信じ切れずに手放したということになります。
エルマと組んだ意味|「追放された者同士」の決定的な違い
エルマは家族から、ルーチェは仲間から追放されました。
エルマが失ったのは家督で、ルーチェが失ったのは居場所と分け前です。
立場は違っても、目に見える評価だけで切り捨てられた点で二人は重なります。
そのうえで対照的なのが、お金の扱い方です。
クラインが地面に十万ゴルドをばら撒いたのに対し、エルマは初対面で取り分は彼女が八、自分が二でいいと持ちかけました。
さらにエルマは、ばら撒かれた金貨を拾わないようルーチェを止めています。
ああいう相手は施したことだけをいつまでも覚えている、という理由でした。
実際、後にクラインは恵んでやったのに恩を忘れたのかと叫び、受け取っていませんと返されて肩を落とします。
エルマの読みが、そのまま伏線として回収された形です。
ちなみに原作のエルマは、ゲームでは幸運担当が他のメンバーの三倍から四倍の分配を受けるのが相場だったと考えています。
クラインが一番低い取り分すら拒んだ相手に、エルマは最初から最も高い取り分を差し出していたことになります。
同じ人材に対して、片方はゼロ、片方は八割という値をつけたことになります。
この落差が、二つのパーティの差をそのまま表しています。
エルマも最初は「スキルで選んだ」側だった
見落とされがちですが、エルマもルーチェを誘ったきっかけは〈豪運〉というスキルでした。
スキル目当てで勧誘した点では、噂を聞いて彼女を入れたクラインたちと構造は同じです。
原作第三十二話でエルマ自身、レベルやクラスで人を見ていた点では父親やクラインと変わらないと振り返っています。
転機はエンブリオとの戦いでした。
逃がしたはずのルーチェは引き返して戻り、〈ダイススラスト〉で四を出して外した後も、〈曲芸歩術〉で天井を走って二撃目の六を通します。
エルマはそこで、勝ちを呼んだのは天運ではなくルーチェ本人だと気づき、スキルのおかげという言葉を否定します。
クラインとエルマの差は、見えない価値に対価を払ったかどうか、そしてスキルの先にいる人間を見たかどうかにあったのだと思います。
捨てられたことこそ最大の幸運?|クラインが価値に気づかなかった幸運
ルーチェにとっては、パーティを追い出されてエルマに拾われたこと自体が最大の幸運だったという見方があります。
筆者もこれに賛成で、さらに言えばクラインが最後まで価値に気づかなかったことも幸運の一部でした。
勧誘の場面でリースは、エルマが熱心なのはおかしい、やはり恩恵が大きいのではとクラインに耳打ちしています。
ここでクラインが折れて和解していれば、ルーチェは不当な扱いのままパーティに残っていたかもしれません。
クラインの欲とプライドが、皮肉にもルーチェを解放する方向に働いたわけです。
その後、二人が推奨レベル五十のダンジョンの主を倒し、ルーチェがF級からD級へ飛び級したと知ったクラインは、剣の売却額を三等分にすると頭を下げます。
しかしルーチェはエルマと並んで、その横を素通りしていきました。
お金が欲しいはずが、自分から険しい道を選んでいる
ルーチェは高級店で好きなだけ注文するのが夢だと語り、料理の値段に一喜一憂するような、お金に素直なキャラクターです。
それなのにエルマと組んでからは、毎回のように生死の境を歩くことになります。
ここだけ見ると巻き込まれた皮肉にも見えますが、原作を読むと少し事情が違います。
エンブリオが落とした〈中級風魔法〉の技能の書を使えば、ルーチェは冒険者として一生困らない安定した道を選べました。
それでも彼女は、エルマが教えてくれた上を目指したいし早々にお別れは寂しいと言って、その書を使わない選択をします。
危険な道は押しつけられたものではなく、ルーチェ自身が選んだ道だということです。
アイザスの「エルマを、よろしく頼んだ」|お義父様呼びに見るルーチェの変化
第一章の終盤、マリスとの模擬戦の後には、ルーチェを語るうえで外せない場面があります。
謝罪の一言もなく去ろうとするエルマの父アイザスを、ルーチェが呼び止めて謝ってくださいと食い下がるのです。
実の父親なのに冷たすぎる、エルマさんが不憫だという趣旨の言葉で、ルーチェは自分のことではなくエルマのために怒っていました。
相手は平民の口答えを許さない伯爵で、エルマですら止めに入る状況でした。
アイザスは背を向けたまま、ルーチェに向けて「エルマを、よろしく頼んだ」とだけ言い残して去ります。
翌日ルーチェは、お義父様からエルマさんのことを任されましたと胸を張り、エルマを困惑させました。
笑える場面ですが、追放の場面と並べると彼女の変化がよく分かります。
クラインには剣の分け前を諦めてまで置いてほしいと頭を下げた少女が、今度は伯爵相手に他人のために声を上げているのです。
自分を正当に扱ってくれる相手に出会ったことで、ルーチェは言うべきことを言える人間になりました。
アニメでルーチェを演じるのは若山詩音さんで、こうした卑屈さと図太さの振れ幅が大きい役どころを担っています。
ルーチェの今後の成長予想|〈豪運〉と〈愚者の曲芸〉の行き着く先
合流時点のルーチェは〈豪運〉に十五ポイントを振った段階で、F級の割り振り上限に引っかかっていました。
昇級で上限が外れれば〈豪運〉をさらに伸ばせるため、幸運力はここから大きく跳ね上がるはずです。
筆者が注目しているのは、幸運力の使い道が探索から戦闘へ広がっていく流れです。
エルマによれば〈愚者の曲芸〉は〈豪運〉で伸ばした幸運力を活かしてトリッキーに戦えるツリーで、終盤でもレベル上げに困らないとされています。
エンブリオ戦の〈ダイススラスト〉がそうだったように、今後のルーチェは稼ぎ役ではなく、確率で勝負を決める決め手になっていくと予想します。
もう一つの成長は内面です。
追放直後の彼女は、後でがっかりされるより先に見限られたほうが楽だと言ってステータスを差し出していました。
その癖が抜けて、自分の価値を自分の言葉で主張できるようになったとき、ルーチェは本当の意味で追放の傷から抜け出すのだと思います。
本記事の設定や台詞の確認は、「小説家になろう」で連載中の原作『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』の本文を基準にしています。
漫画版の書誌情報は講談社の作品ページ、アニメの話数とサブタイトルは放送局・配信サイトで公開されている各話あらすじで確認しました。
漫画版やアニメ版では描写の順番や台詞が変わっている場合があるので、その点はご了承ください。
まとめ|ルーチェ追放の本当の理由は「見えない貢献」への無理解だった
ルーチェがクラインのパーティを追放された表向きの理由は、攻撃スキルがなくレベルも上がらない戦力外だったことです。
しかし本当の理由は、二百万ゴルドの剣の分け前を一番レベルの低い仲間に渡したくなかったことにありました。
〈豪運〉の価値が理解されなかったのは、効果が確率でしか現れず、最初から一緒にいたために比較対象がなかったからです。
エルマはその見えない価値に正当な対価を払い、やがてスキルではなくルーチェ本人を評価するようになります。
捨てられたことも、クラインが気づかなかったことも含めて、ルーチェの幸運は出会いの形で働いていたと言えそうです。
エルマや父アイザス、マリスとの関係を整理したい方は、次に「転生重騎士はゲーム知識で無双する 登場人物・キャラ4人を解説」も読んでみてください。
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