食糧人類Re:ナツネと山引の再登場|前作の二人は体ごと次の世代に託した

その他作品考察

『食糧人類Re: -Starving Re:velation-』は、人類が「天人」に食べられることを誉れとして生きる未来の日本を描いた、前作『食糧人類 -Starving Anonymous-』の続編です。

この記事では、前作の人気キャラクターであるナツネと山引が続編でどう再登場し、何をしたのかを最終回まで踏み込んで考察しますので、未読の方はネタバレ注意でお読みください。

先に結論を書くと、続編のナツネと山引は主人公として戦い直したのではなく、自分たちの体と知識を次の世代に丸ごと渡す役を引き受けた、というのが本記事の主張です。

前作でナツネの体は怪物を倒すための「餌」として使われましたが、続編では天沢たちを生かすための体に変わっています。

物語全体の流れと結末については、食糧人類Re:ネタバレ考察|天人が滅んでも人類は神を手放せなかったで整理しています。

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ナツネと山引とは|前作『食糧人類』で巨大生物を滅ぼした二人

まず、前作を読んでいない方のために二人をおさらいします。

前作『食糧人類』は、主人公の伊江が人間を食料として育てる地下の施設に連れ込まれ、仲間とともに脱出と反撃を試みる物語です。

ナツネは、その施設で食料を絶やさないために作られた「増殖種」で、中枢神経さえ無事なら体を再生できる唯一の完全体として描かれました。

最初は感情に乏しく暴力に頼りがちでしたが、伊江との関わりの中で友情を知り、人間らしい表情を見せるようになっていきます。

山引は遺伝子学の天才で、さまざまな生物の遺伝子を自分に取り込み、ほとんど死なない体を手に入れた青年です。

ciatrの解説によると、前作の最終盤で山引はナツネの体を大量に増殖させて巨大生物に食べさせ、その肉に生じた異常プリオンによって、巨大生物を世代を重ねながら全滅へ追い込みました。

前作のラストでは、3年後に二人が伊江の前へ姿を見せ、怪物を根絶やしにしたと告げています。

つまり前作の読者にとって、二人は「戦いを終わらせた側」の人物でした。

その二人が、怪物を神と崇める数百年後の世界に再び現れるわけですから、喜びと戸惑いの両方が生まれるのは当然です。

再登場は37話と38話|帆秋二三麿の体から現れたナツネと山引

続編の序盤には、前作の人物は出てきません。

ネタバレありのレビューにも、前作とは別の話として始まるが、読み進めるとナツネと山引が出てくる、と書いたものがあります。

ただ伏線はありました。

18話のコメントには、一般の人にはない能力がナツネや山引を思い出させるという声があり、11話には帆秋は山引とは雰囲気が違うという書き込みも見られます。

二人がはっきり姿を見せるのは単行本4巻にあたる部分です。

講談社の4巻紹介文は、管理者との死闘で仲間が倒れていく中、両断された帆秋の肉体から2人の男が現れる、と予告しています。

めちゃコミックの配信話数でいうと、37話のコメント欄に「ナツネくんだー」「ナツネくんか?やっと登場?」という声が並び、38話には「山引くんも出た!!どうゆうこと!?」「懐かしい二人が見られて嬉しい」と続きます。

複数の感想記事によると、二人は管理者の桐山に切断された帆秋の下半身から増殖する形で現れました。

体を保てる時間はごく短く、その間にナツネは榊万智音とともに桐山と戦い、山引は倒れていた天沢と柚のもとへ向かいます。

39話には「山引くん全然変わってなくて草」「山引くん相変わらず変態でよかった」というコメントがあり、前作の飄々とした山引がそのまま戻ってきたことを、読者が喜んでいる様子が分かります。

同じ39話には、変態だけど頼りになる、という声もありました。

帆秋の過去|洞穴の池でベニクラゲとして漂っていた二人との出会い

では、なぜ二人が帆秋の体の中にいたのでしょうか。

答えは、帆秋二三麿の子ども時代にあります。

感想記事によると、帆秋は食味スコアが上がらないことで親から見放され、父親に山へ連れて行かれて崖から突き落とされました。

41話には「子ども時代がつら過ぎる」、42話には父親の反応の薄さに胸が苦しくなるというコメントがあり、帆秋の過去は読者にとっても重い場面です。

落ちた先の洞穴で狂気に飲まれた帆秋は、この世界の人間を残らず殺すと決め、その途中で池に落ちます。

44話のコメントに、池に落ちてクラゲが出てきたことへの驚きが書かれているのは、この場面です。

その池にいたのが、ナツネと山引でした。

二人は不老不死といわれるベニクラゲの遺伝子を使い、数百年にわたって自分たちの遺伝子を保ったまま漂っていたと紹介されています。

45話のコメントには、さらっとDNAをたくさん持っていると言えるのが恐ろしいという声や、「そんな出会いでしたか」という反応がありました。

二人は意識の中で帆秋と言葉を交わし、自分たちの持つ知識と体のすべてを与えると告げて帆秋と一つになります。

帆秋が増殖種になったのは、このときです。

46話には、前作とは別物という評判を聞いていたが「めっちゃ続編やった!」「繋がったー!」と喜ぶ声がありました。

4巻の紹介文が、二人を「この歪んだ世界の成り立ちを知る」者として紹介しているのも、数百年を生き延びてきた存在だからこそでしょう。

山引が天沢と柚を蘇らせた|増殖種になった新しい世代

再登場した山引の最大の仕事は、天沢大輝と蓮沼柚を生き返らせたことです。

二人は33話で管理者に体を両断され、コメント欄には「え!?天沢くんも柚も!?」「あれ?主人公いなくなっちゃうよ?」という悲鳴が書き込まれていました。

感想記事によると、山引は自分の組織を二人の体に注ぎ込み、切断された上半身と下半身の神経をつないで再生させています。

これによって天沢と柚も増殖種の体を持つことになり、物語は前作の生き残りと新しい世代が同じ力を分け合う形へ進みます。

ここで注目したいのは、二人が前に出て敵を倒し続けたわけではない点です。

短い時間で戦況をひっくり返したあと、二人の体は限界を迎えて消え、物語の中心は天沢、万智音、帆秋の側に戻ります。

感想記事では、二人の意識はその後も帆秋の中に残っていると読まれています。

前作の人気キャラクターを再び主役にする道もあったはずですが、作品はそれを選びませんでした。

帆秋二三麿の中の山引|セリフににじむ前作の面影

二人が帆秋と一つになっていたと分かると、それまでの帆秋の言動も違って見えてきます。

46話には、帆秋の中に3人いたということか、と整理するコメントがありました。

47話には、帆秋のセリフが山引っぽいのでは、という声も書き込まれています。

万智音を怒らせるほどの帆秋の突飛な言動は、前作の山引を知る読者には見覚えのあるものだったようです。

ただし、帆秋は山引そのものではありません。

11話のコメントにあるように、帆秋には山引とは違う危うさがあり、それは親に捨てられた子ども時代から来るものだと読めます。

本記事では、帆秋を「山引の知識とナツネの体を受け継いだ、別の人間」と捉えています。

前作の二人は、帆秋の中で消えたわけでも、帆秋を乗っ取ったわけでもなく、三人分の記憶を抱えた新しい人物を生んだと考えると、帆秋の不思議な人物像が理解しやすくなります。

最終話で帆秋が残したとされる、人間は支配にも自由にも耐えられないという趣旨の言葉にも、人間を外側から眺めてきた山引の冷めた視線が混じっているように感じます。

ここは作中で説明されていないので、あくまで本記事の予想です。

「懐かしい」と「悲しい」|ナツネ再登場に分かれた読者の声

二人の再登場は、おおむね歓迎されています。

ネタバレありのレビューには、あの2人にまた会えたのもゾクゾクした、と書いたものがありました。

前作を読んでいないと流れがつかみにくいが、途中から前作と繋がった、という感想もあります。

一方で、前作の読者ほど複雑な気持ちになったことも見逃せません。

レビューには、虫は駆逐されていたと思ったのに結局元に戻っていて悲しい、という声や、倒したはずのヤツラはまだいるのか、という声がありました。

伊江たちが命がけで終わらせたはずの戦いが、数百年後には怪物を神と崇める社会に変わっていたのですから、前作の頑張りが無かったことにされたように感じる人がいるのは自然です。

ただ、本記事はこの見方には少し異を唱えたいと考えます。

前作で滅びたのは地上の巨大生物で、続編で明かされる「真の天人」は、扉の向こうで高度な文明を築いていた別の層の存在でした。

前作の巨大生物と天人の血縁は作中で明言されておらず、ここは断定できませんが、少なくとも前作の勝利そのものが嘘だったと描かれたわけではありません。

むしろ、前作の勝利が届かなかった場所があった、と読むほうが筋が通ると考えます。

そして、その届かなかった場所に次の世代を送り出したのが、数百年を生き延びたナツネと山引でした。

最終盤のナツネと山引|群衆の中の二人と、その行方

二人は最終盤にも姿を見せます。

真実の映像が流れ、帆秋が群衆を扉の向こうへ導く場面について、85話のコメントには「あの2人もいるし」という声があり、最終回を紹介した感想記事でも、二人が群衆に紛れていたと書かれています。

その後、扉の向こうの真の天人は、人間が持ち込んだウイルスによって滅びました。

最終話で帆秋は姿を消し、二人のその後もはっきりとは描かれていません。

87話のコメントには、あっちの世界に行った帆秋たちがどうなったのか知りたいという声があり、読者の多くは三人が一緒に去ったものと受け止めているようです。

なお、ナツネと山引が最後にどこへ向かったのかは、作中で確定できる描写を今回の調査では確認できませんでした。

感想記事には、山引たちが前作で果たせなかったことを続編で果たしたという見方も紹介されています。

前作で地上の怪物を終わらせた二人が、続編では扉の向こうの支配者まで終わらせる場に立ち会ったと考えると、二人の物語はここでようやく閉じたと言えそうです。

ナツネと山引は死亡したのか|前作から続く「死なない体」の結末

二人の生死が気になる方も多いと思うので、分かることを整理しておきます。

前作でナツネは一度、施設の所長に頭を破壊されて命を落としたように見えましたが、山引の背中から復活しています。

山引も、致死量の放射線を浴びせられながら、ほかの生物の遺伝子を取り込んで生き延びた人物です。

二人とも、前作の時点で「普通の意味では死なない」存在でした。

続編では、ベニクラゲの姿で数百年を漂い、帆秋の体の中に宿り、必要なときだけ外へ現れるという形で生き続けています。

4巻で二人の体が消えた場面も、感想記事では帆秋の中に戻ったと読まれており、死亡と受け止めた声は今回確認したコメントの中には見当たりませんでした。

最終盤に群衆の中で姿が確認されていることからも、少なくとも物語の終わりまで二人は存在し続けていたと考えるのが自然です。

ただし、扉の向こうへ渡ったあとの二人がどうなったのかは描かれていないので、生存しているかどうかは断定できません。

続編を望む読者の声が多いのは、この余白があるからでもあるでしょう。

独自考察|ナツネの体は「食べられるため」から「生かすため」に変わった

ここからは本記事の読みです。

ナツネというキャラクターは、前作でも続編でも、自分の体を差し出す存在でした。

そもそも増殖種は、支配者のための食料を絶やさないために作られた体です。

前作の最終盤でも、ナツネの体は大量に増やされ、怪物に食べさせる武器として使われました。

そこには勝利がありましたが、ナツネの体が「食べられるもの」として扱われた事実は変わりません。

続編では、同じ体の差し出し方がまったく違う意味を持ちます。

二人は、親に捨てられて池に落ちた子どもに知識と体を与え、両断された天沢と柚には山引の組織を分け与えて命をつなぎました。

食べさせるためではなく、生かすために体を渡したわけです。

この変化は、続編のテーマとよく噛み合っていると考えます。

続編の社会では、子どもは食味スコアで測られ、出荷されることが名誉とされます。

帆秋はその価値観に捨てられた子どもで、天沢は出荷される側の柚を救おうとした少年でした。

人間の体を「肉」としか見ない世界で、もとは食料として作られたナツネの体が、子どもたちを生かす力として受け継がれていくのは、強い皮肉であり、同時に希望でもあります。

前作の主人公たちの頑張りを壊したのではなく、その頑張りの続きを次の世代の体の中で続けさせた、というのが本記事の見方です。

二人が主役の座に戻らなかったのも、そう考えると納得がいきます。

主役として戻れば、物語は前作の英雄がもう一度世界を救う話になります。

しかし続編が描きたかったのは、洗脳された社会の内側から、自分の頭で考える人間が育つかどうかでした。

そのためにナツネと山引は、表舞台ではなく帆秋の体の中から、新しい世代を支える役に回ったのだと考えます。

まとめ|食糧人類Re:のナツネと山引は、体ごと次の世代に託した

『食糧人類Re: -Starving Re:velation-』のナツネと山引は、37話と38話で帆秋二三麿の体から現れ、前作の読者を驚かせました。

二人はベニクラゲの遺伝子で数百年を生き延び、池に落ちた幼い帆秋に知識と体を与えていたことが明かされます。

再登場した山引は、両断された天沢と柚をよみがえらせ、二人を増殖種として戦いに戻しました。

前作の勝利が崩されたように感じた読者もいましたが、本記事は、前作の勝利が届かなかった場所へ次の世代を送り出したのが二人だったと考えます。

食料として作られたナツネの体が、続編では子どもたちを生かす力になったことこそ、二人の再登場のいちばんの意味でした。

二人が「世界の成り立ちを知る者」として予告された理由をもっと深く知りたい方は、食糧人類Re:天人の正体|知性がないのは本物の支配者ではないからもあわせて読んでみてください。

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