「氷の城壁」第2期は2026年10月1日木曜、TBS系全国28局で放送が始まる。心を閉ざした高校生・氷川小雪と、まっすぐ距離を詰めてくる雨宮湊、幼なじみの安曇美姫、バスケ部員の日野陽太という四人の青春群像劇だ。
公開されたティザービジュアルは、四人の視線が一つも交わらない構図で話題になった。この絵が不穏に見えるのは、四人が仲違いしているからではない。全員が、相手そのものではなく相手に貼られたラベル越しにしか目を向けていないからだ。
タイトルの「城壁」を小雪一人の性格の話として読むと、この作品は半分しか見えない。壁は四人が別々に持っている。しかもそれは、他人が貼ったラベルを本人が守り続けている状態を指している。第2期は、そのラベルが一斉に剥がれる話だ。
小雪の壁は「誤解されている」ではなく「誤解されたままでいる」壁だ
氷川小雪は、三白眼という特徴的な目つきから同級生に「女王」と呼ばれているが、実際には人付き合いが苦手なだけの、ごく普通の女子高生である。中学時代の苦い経験から他人との間に無意識の壁を作ってしまい、心を許せるのは幼なじみの安曇美姫くらいという状況が第1期で丁寧に描かれた。
ここで見落とされやすいのは、女王という呼び名が彼女を傷つけるだけの存在ではないという点だ。怖い相手だと思われている限り、誰も踏み込んでこない。踏み込まれて拒む場面も、拒みきれずに失敗する場面もやってこない。誤解は不便だが、同時に安全でもある。
だからこの作品は「誤解が解ければ解決する」物語にならない。小雪が壊すべきなのは他人の思い込みではなく、その思い込みに寄りかかっている自分の側だ。見た目と中身のギャップに悩んだ経験がある人ほど刺さるのは、この一段深いところにある。
第2期では、友達だと思っていたはずの湊への感情が、小雪の中で「好き」という自覚に変わっていく過程が描かれると予告されている。自覚とは、壁の内側にいる自分を自分で認める作業でもある。壁の話と恋の話は、ここで一本につながる。
感情をまっすぐ言葉にできない小雪だからこそ、表情や間の取り方が物語を語る比重は大きい。三白眼がふとした瞬間にやわらぐ変化を寄りのカットで見せる演出は第1期でも印象的だった。原作Webtoonのコマ運びを映像へどう翻訳するかという点も、第2期の楽しみ方になる。
湊は空気が読めないのではなく、読んだうえで踏み込んでいる
そこに現れたのが、初対面から遠慮なく距離を詰めてくる雨宮湊だ。小雪の張り巡らせた壁は、彼の飾らない態度によって少しずつ崩れていく。
ただ湊は、場の空気を読まずに踏み込むタイプに見えて、実は誰よりも人の反応を観察している。この二面性は第1期の見どころだった。つまり彼は無自覚に壁を壊しているのではない。壊しても大丈夫な位置を毎回測っている。
その慎重さの理由も第1期でじわじわと明かされる。湊自身、過去に人間関係でうまくいかなかった経験を抱えている。他人の反応に敏感なのは、失敗の記憶があるからだ。
そして湊にも「距離感がおかしい男子」というラベルが貼られている。彼はそれを引き受けている。踏み込む側でいる限り、自分が踏み込まれる番は回ってこないからだ。壁を壊す役に見えて、湊もまた別の形の壁の内側にいる。声を担当する永瀬アンナと千葉翔也の掛け合いは第1期から評判が高く、じれったい距離感の芝居がどう深まるかが注目される。
「アイドル」と「優しい先輩」も、他人が貼ったラベルの名前だ
小雪の幼なじみである安曇美姫は、学校内でも人気の高いアイドル的ポジションにいながら、実は誰よりも人の顔色を読んで自分の本音を抑えてしまうタイプだ。バスケ部の日野陽太は物腰が柔らかく面倒見のよい性格で、美姫にとって長く隣にいた気の置けない存在として描かれてきた。二人は互いを大切に思いながら、その関係を壊すことを恐れて一歩を踏み出せずにいる時間が長く続いた。
第2期では、陽太が長年抱えていた美姫への想いをついに言葉にする展開が待っている。美姫はそれをすぐには受け止めきれず、自分の気持ちを言語化できないまま揺れ動く場面が増えると見られる。
ここで剥がれるのは、恋愛の答え以前に二人のラベルだ。優しい先輩は優しいだけの人でいることをやめ、アイドルは求められる自分を演じきれなくなる。日野陽太は、穏やかな部活の先輩というだけで消費されがちなポジションでありながら、本作は優しさの裏にある我慢強さを長い時間をかけて描いてきた。想いを打ち明ける瞬間の重みが他の学園ものより増しているのは、その積み重ねがあるからだ。
小雪と湊がゼロから関係を作るのに対し、美姫と陽太はすでにある信頼関係の上に告白という一つの出来事が乗る。関係が長いからこそ言えなかったというもどかしさは、恋愛経験の有無を問わず届く。美姫役の和泉風花、陽太役の猪股慧士がこのすれ違いをどう演じ分けるかも、キャストの実力が試される場面になる。
四人の壁は「素の自分を見せるのが怖い」一点でつながっている
原作者の阿賀沢紅茶は、明るく賑やかな日常の奥に本音を言えない苦しさを抱えたキャラクターを描くことに定評がある作家だ。小雪の壁も、美姫のアイドルらしさも、陽太の優しさも、突き詰めればすべて素の自分を見せるのが怖いという一点でつながっている。
つまり四人は、別々の悩みを抱えているのではない。同じ症状を四通りの形で出している。本作が主人公一人の視点ではなく群像劇の形式を取っているのは、この構造を見せるためだ。一人称で語れば、それはただの内気な少女の話に縮んでしまう。四人分の視点を行き来して初めて、これが個人の性格ではなく共通の症状だと分かる。
SNSで常に他人からの反応にさらされる今の高校生世代にとって、本音を出すこと自体がリスクになりうるという感覚は大げさな設定ではない。四人の悩みが妙にリアルに響く理由もそこにある。原作はLINEマンガ連載のWebtoon形式で2017年から2022年にかけて描かれ完結済みで、累計発行部数280万部を突破している。
第2期から入る人は、四人の立ち位置だけ押さえれば足りる
第1期は原作漫画のおおむね5巻あたりまでを全13話で描いた。孤立していた小雪が湊との出会いをきっかけに少しずつ人と関わることを覚え、美姫と陽太は互いを大切に思いながら本音を言い出せずにいる関係を積み重ねてきた。
第2期はそこから続く6巻以降を土台にする。ティザービジュアルが示す通り、これまでのじれったさが、より強い感情のぶつかり合いへ変わっていく段階だ。ラベルが剥がれる分だけ感情の動きは加速するので、新規の視聴者にとってはむしろ入りやすい。小雪・湊・美姫・陽太という四人の立ち位置さえ押さえておけば置いていかれる心配は少ない。
どのキャラクターに感情移入するかによって、同じエピソードでも見え方が変わってくるのも群像劇形式ならではだ。放送は毎週木曜夜11時56分からTBS系全国28局で、配信サービスでも順次視聴できる予定になっている。
まとめ
「氷の城壁」の城壁は、小雪一人が築いたものではない。四人がそれぞれ、他人に貼られたラベルを自分の手で守り続けている状態のことだ。女王も、距離感のおかしい男子も、アイドルも、優しい先輩も、全部その名前である。
第2期は、小雪が湊への感情を自覚し、陽太が想いを言葉にすることで、四枚のラベルが同時に剥がれ始める季節を描く。誰と誰がくっつくかという興味だけで追うと、この作品はもったいない。
放送は2026年10月1日木曜から、毎週木曜夜11時56分、TBS系全国28局。四人が守ってきた呼び名を、どこで手放すのか。そこを見るための準備だけしておけばいい。
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