追放された転生重騎士 マジックワールド考察|この世界はゲームそのものなのか

その他作品考察

『追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』の世界は、エルマが前世でやり込んだゲーム〈マジックワールド〉そのものなのでしょうか。

この記事では漫画版とその原作をもとに、マジックワールドとこの世界の同じ点と違う点、重騎士の真価が知られていない理由、エルマが転生した理由、ゲーム知識が通用しなくなる兆しまでを考察します。

この作品のクラスやスキルツリー、エルマのゲーム知識の中身については『追放された転生重騎士 世界観・設定まとめ|重騎士と加護の儀を解説』で整理しているので、この記事ではゲームとこの世界の違いと、世界の成り立ちの謎に絞って考えます。

なお本文は物語の中盤以降と、Web原作の第三章、第四章の内容に触れるため、ネタバレ注意です。

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マジックワールドとは|エルマが前世でやり込んだVRオンラインゲーム

最初に、作中で〈マジックワールド〉がどう説明されているかを確認しておきます。

原作の第一章第一話「〈加護の儀〉」で、エルマは〈ステータス〉が目の前に形成された瞬間に、この世界が前世でやり込んでいたVR対応オンラインゲーム〈マジックワールド〉と全く同じだと気づきます。

一日二十時間をこのゲームに費やした日もあったと語られているので、エルマはかなりの廃人プレイヤーだったことになります。

しかも彼が愛用していたクラスこそ重騎士で、前世では重騎士の解析と育成に傾倒していたと本人が振り返っています。

ここで押さえておきたいのは、〈マジックワールド〉が一人用のRPGではなく、大勢のプレイヤーが同じ世界を遊ぶオンラインゲームだという点です。

原作には、攻略サイト、上位プレイヤー、アップデートによる調整、キャラビルドの相談に乗る「クラスアドバイザー」といった言葉が何度も出てきます。

つまりエルマの知識は、彼一人が発見したものではなく、膨大な数のプレイヤーが検証して共有した集合知なのです。

ゲームと同じところ|ステータス・スキルツリー・ドロップ率は共通仕様

エルマが「全く同じ」と感じたのは、主に戦闘と成長のシステムです。

原作の第三話でエルマは、システムに関しては今見た限り〈マジックワールド〉と同一と考えて問題なさそうだと結論づけています。

〈ステータス〉の項目、スキルツリー、ダメージ計算式、装備の性能、魔物の攻撃タイミングまで、ゲームで予習した通りに動くわけです。

ダンジョンにあたる〈夢の穴〉の仕組みも共通で、マップはランダム生成だが出てくる魔物とアイテムの種類は変わらないという仕様まで一致しています。

成金ラーナの出やすい生成ルートを知っていたり、道化師の〈豪運〉で金蝦蟇を狙ったりできるのも、ドロップや出現率の数字がゲームと同じだからです。

ここでは「数字と仕組みの層はゲームと同じ」と押さえておけば十分です。

ゲームと違うところ|ワンライフ制と意思を持つ魔物と住人

一方で、エルマ自身が何度も「完全にゲームと同一というわけではない」と認めています。

違いを並べていくと、この世界がゲームの再現ではなく、ゲームの仕組みの上に現実の重さが乗った世界だということが見えてきます。

死が現実になったことで変わった常識

最大の違いは、死んだら終わりだという点です。

〈マジックワールド〉には死亡時のデスペナルティがあり、経験値やレベルが下がるだけで済みました。

ところがこの世界はワンライフ制で、デスペナルティがそのまま死を意味します。

エルマも、ゲームなら格上相手にワンチャン狙いで挑む戦略も取れるが、死ねばそれまでのこの世界では運任せのキャラビルドはできないと考えています。

この違いは個人の戦い方だけでなく、社会の仕組みにまで影響しています。

たとえば〈マジックワールド〉では冒険者ギルドが〈夢の主〉の討伐報酬を出すことはなかったのに、この世界では報酬が出ます。

エルマはこれを、人命の価値が上がった世界だからこその措置だと読んでいます。

魔物はスキルを学習し、住人は自分の頭で考える

二つ目の違いは、魔物も人も「仕様どおり」には動かないことです。

〈天使の玩具箱〉の〈夢の主〉エンブリオ戦では、配下のブリキナイトがエルマの〈シールドバッシュ〉の動きを覚えて避けてみせます。

エルマは、ゲームならただの魔物がこんな機敏にスキルへ対応できなかったはずだと驚きつつ、ゲームの世界ではないのだから当たり前だと受け止めます。

さらにエンブリオは、ゲームでは見たことのない、悪意の込められた笑みを浮かべます。

人間の側も同じで、狩人のケルトがこの世界の仕組みを利用して立ち回る様子を見たエルマは、プレイヤーの知識もない住人がここまでできるのかと驚き、この世界の冒険者の知恵を軽視していたかもしれないと反省します。

ゲームでいうNPCではなく、それぞれが自分の利害で考えて動く人間だということを、エルマは戦いのたびに思い知らされていきます。

ゲームに無かった国と文化と仕様

三つ目の違いは、世界の中身そのものです。

原作の第二話で、エルマはゲームの設定とこの世界の歴史や風土は全く違い、国名も地名も何一つ一致しないと述べています。

貴族の権力もゲームよりはるかに強く、エルマはこれを、ゲームの世界が現実と擦り合わせられた結果ではないかと考えています。

クラスの決まり方も違い、ゲームではキャラメイク時に神から二十近い質問を受けて決まったのに対し、この世界では十五歳までの生き様で決まります。

細かいところでは、算盤に似た数石盤という道具について、エルマは〈マジックワールド〉にはなかったがこの世界が現実化するにあたって生まれた文化だと見ています。

重騎士の真価が知られていない理由|攻略サイトのない世界のマジックワールド

では、ゲームでは最強と呼ばれた重騎士が、なぜこの世界では欠陥クラス扱いなのでしょうか。

ファンの間では「重騎士が不遇なのはレベル上げができないから」とよく言われますが、原作を読むと、その裏にはもう少し大きな構造があります。

理由1|重騎士はゲームでも攻略サイトを見ないと出ないクラスだった

原作の第十三話によれば、〈マジックワールド〉の重騎士はキャラメイク時のクラス診断でも出現ルートが狭く、攻略サイトを見て狙わなければほぼ出ないクラスでした。

運営が最初から玄人向けにデザインしていたようだとも書かれています。

エルマは、この出現率がこの世界にも反映されているなら、重騎士の情報自体が少ないのは必然かもしれないと考えています。

さらに〈重鎧の誓い〉が最弱のネタスキルツリーと言われていたのは〈マジックワールド〉の初期の話で、検証され尽くした結果として最強が証明された、と第二話で語られています。

理由2|この世界の住人はスキル情報を共有しない

二つ目の理由が、情報共有の文化の違いです。

原作では、この世界では他人のスキル構成は基本的に秘匿情報だと何度も説明されます。

ケルトは〈ステータス〉が詳細に筒抜けになったら、いいようにこき使われてパーティーなど組めなくなると言い切ります。

エルマはこの言葉を聞いて、ゲーム時代なら仲間の情報共有が禁忌だなんて有り得なかったが、この世界は出回っている情報が不完全すぎるのだろうと受け止めています。

加えて、ハウルロッド侯爵家のような大貴族も、加護に関する情報を外部に秘匿してきたと語られています。

ゲームではネットに攻略情報が集まっていきますが、この世界では情報を持つ者ほど抱え込みます。

理由3|格上に挑むことがタブーの世界

三つ目が、レベル上げの設計とワンライフ制の噛み合わせの悪さです。

〈マジックワールド〉のレベル上げは、自分より格上の魔物を工夫して倒すのが最適解だとされています。

ところがこの世界では、負けるかもしれない戦いに挑むこと自体がタブーで、最悪の場面では自分一人でも生き残ることが優先されると書かれています。

格上を狩らないとレベルが上がらないゲームの仕様を、格上に挑まない住人が遊んでいる状態だと言えます。

エルマも、この世界では攻撃性能が低ければそれだけでレベルアップの機会が大幅に減ると認めています。

つまり「レベル上げができないから不遇」という見方は正しいのですが、その原因は重騎士の性能だけではなく、死が現実になった世界でゲームの成長設計がそのまま動いていることにあるのです。

マジックワールドはクソゲーなのか|ゲーム設計目線で見る仕様

ここで少し視点を変えて、〈マジックワールド〉をゲーム開発の目線で見てみます。

読者の間では「この世界のゲーム、冷静に考えるとクソゲーでは」というツッコミもよく見かけます。

デスペナルティのレベルダウンが大きく、〈死線の暴竜〉のようなハイリスクなスキルは一発逆転が好きなエンジョイ勢しか使わなかったとされています。

初期の〈マジックワールド〉は状態異常を持つ敵が強すぎてキャラビルドが狭まり、救済措置の仕様が後から追加されたという話も出てきます。

精神系の状態異常に耐性を持つ騎士のスキルについて「それなら混乱をどうにかしろ」と初期プレイヤーから揶揄されていたという一文もあり、バランス調整に苦労したゲームだったことがうかがえます。

一方で、プレイヤーに愛される設計もきちんと用意されています。

成金ラーナを筆頭とする金蝦蟇は、倒すと大金が手に入るボーナスキャラとして親しまれ、金蝦蟇狩りが一番楽しいというプレイヤーも多かったとされます。

〈百足坑道〉の主ロックセンチピードは、レベルが高いのに倒しやすいので初心者に人気で、プレイヤーから「もうちょっと頑張って欲しい」と応援されていたボスです。

筆者の結論としては、〈マジックワールド〉はクソゲーというより「攻略情報が共有されることを前提にした、尖ったバランスのオンラインゲーム」です。

重騎士の出現ルートを攻略サイト頼みにしたり、ハイリスクなビルドをあえて残したりするのは、プレイヤー同士が検証し合う文化があって初めて成立する設計です。

問題は、そのゲームを攻略サイトもアップデートもない世界に、命懸けで遊ぶ人々ごと移したことにあります。

ゲームとしては名作でも、住人にとってはやり直しの利かないクソゲーになってしまう。

この落差こそが、この作品の世界の残酷さだと筆者は考えています。

エルマはなぜ転生したのか|前世の妄執と夢神の尖兵

エルマがなぜこの世界に転生し、前世の記憶を取り戻したのかは、原作でも明かされていません。

第一話でエルマは、あえて言うなら前世の自分の妄執が転生の垣根を超越したのかもしれない、と半ば冗談のように考えています。

そして原作第三章では、どうして自分が前世の記憶を継ぐことができたのかは全くの謎のままで、深く考えようともしてこなかったと振り返る場面があります。

この問いが動き出すきっかけが、A級冒険者「黒き炎刃」カロスの背後にいた〈夢神の尖兵〉という組織です。

〈夢神の尖兵〉は、貴族以上にスキルやクラスの神秘を知り、それを利用して大災害を起こそうとする集団として描かれます。

エルマは、自分に起きたことなら他の誰かに同じことが起きていても不思議ではないと考え、自分と同じ転生者が関わっている可能性を疑い始めます。

ただし原作でも転生者の関与は断定されておらず、ここから先は推測の領域です。

筆者は、エルマの転生が偶然の事故ではなく、〈マジックワールド〉の知識を持つ人間がこの世界に複数送り込まれている「仕組み」の一部である可能性があると見ています。

もしそうなら、エルマが重騎士を引いたこと自体にも、前世の重騎士への執着が加護の判定に反映されたという意味が出てきます。

クラスが十五年の生き様で決まるこの世界で、前世まで含めた生き様が査定されたのだとすれば、重騎士はハズレどころか、エルマにとって最も当然の結果だったことになります。

独自考察|マジックワールドはこの世界を写した「攻略本」だった可能性

ここからが本記事で一番言いたい考察です。

多くの読者は「ゲームの世界が現実になった」と捉えていますが、原作の描写を並べると、逆の向きで読んだほうがしっくりくる場面がいくつもあります。

一つ目は、〈嘆きの墓所〉の場面です。

その土地のマナの性質に沿った〈夢の穴〉が現れるという説明は、〈マジックワールド〉時代にはただの演出で、フレーバーテキストくらいの意味しかなかったとエルマは振り返ります。

ところがこの世界では、墓場跡にアンデッドの〈夢の穴〉ができるという形で、その説明文が実際の物理法則として機能しています。

二つ目は、ケルトの持つ感知スキル〈第六感〉です。

ゲームでは危険な魔物やレアアイテムをたまに感知するだけのスキルでしたが、この世界ではそれ以外のものにも反応します。

エルマはそこで、ゲームの釣り人NPCが「俺の〈第六感〉が囁くから、今日は早めに帰るのさ」と話していたことを思い出し、フレーバーテキストが拾われて辻褄が合わされている、と解釈します。

三つ目は、ゲーム時代の国々がこの世界ではまったく見つからず、エルマが時代や場所が違うのかもしれないと考えている点です。

ゲームの設定がこの世界に流れ込んだのなら、なぜゲームの説明文の一行一行が、現実の法則としてより豊かに機能しているのでしょうか。

筆者はここに、〈マジックワールド〉のほうがこの世界の一部を写し取った簡略版だった、という可能性を見ています。

本物の世界が先にあり、そのごく一部、つまり数値化できる戦闘システムだけを切り出して遊べる形にしたものが〈マジックワールド〉だった、という読み方です。

そう考えると、システムは完全に一致するのに国や文化が一致しないこと、ゲームでは飾りだった説明文が現実では本当に効いていることにも、自然な説明がつきます。

もちろん原作にそう書かれているわけではなく、あくまで描写から組み立てた仮説です。

ただこの読み方をすると、〈夢神の尖兵〉が貴族すら知らないクラスの神秘を知っている理由も、「攻略本の元になった世界の側の知識」を持っているからだと考える余地が生まれます。

ゲーム知識が通用しなくなる兆し|存在進化と知らない魔物

最後に、エルマのゲーム知識に限界が見え始めている点を整理します。

はっきりした兆しは、存在進化です。

原作の第四章でエルマは、〈マジックワールド〉をプレイし尽くした自分にとって未知の魔物やアイテムは基本的に有り得ないが、唯一の例外が存在進化だと語っています。

ゲーム時代でさえ、その稀少さから一部の魔物を除いてほとんどデータが共有されていなかったからです。

〈百足坑道〉のデスアームドの件では、なぜ存在進化の条件が満たされていたのかが謎のまま残り、黒幕がいるのか、〈マジックワールド〉にはなかった自然現象なのかもわからないとエルマは考えています。

魔物災害が頻発する原因についても、ゲーム時代の仕様やイベントに一切心当たりがないと述べています。

この世界がゲームより広く、しかも同じ知識を持つかもしれない敵まで現れた以上、エルマが知識だけで先回りできる場面は少しずつ減っていくはずです。

漫画版では、なろう版の公開範囲を越えて禁断の大森林の大討伐編に入っており、ゲームの攻略情報が通用しない局面がどう描かれるかが、今後の大きな見どころになりそうです。

本記事の設定や台詞の内容は、小説家になろうに掲載されている原作『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』(猫子)の本文と、講談社の作品ページで公開されている漫画版(漫画:武六甲理衣、キャラクター原案:じゃいあん)の情報をもとに確認しています。

漫画版で個々の場面がどの話に描かれているかは、ヤンマガWebやコミックDAYSで本編を確認してください。

まとめ|マジックワールドはこの世界の「入口」にすぎない

〈マジックワールド〉は、エルマが前世で一日二十時間を費やした日もあるVR対応オンラインゲームで、この世界とはステータスやスキルツリー、ドロップ率といったシステムが一致しています。

一方で、ワンライフ制の重さ、スキルを学習する魔物や自分の頭で考える住人、国名や文化の違いなど、ゲームとは異なる点もはっきり描かれています。

重騎士の真価が知られていないのは、ゲームでも攻略サイト頼みの玄人向けクラスだったこと、この世界ではスキル情報が秘匿されること、格上に挑むことがタブーであることが重なった結果だと考えられます。

筆者は、ゲームの説明文が現実の法則として機能している描写から、〈マジックワールド〉のほうがこの世界を写した簡略版だった可能性を考えています。

重騎士を支えるスキルの組み合わせについては「追放された転生重騎士 エルマのスキル考察|死線の暴竜コンボが格上を倒す理由」で詳しく解説しているので、あわせて読んでみてください。

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ここで書いた読み方を頭に入れて読み返すと、同じ場面でも見えてくるものが変わります。DMMブックスなら試し読みから電子で読めます。

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