追放された転生重騎士はゲーム知識で無双するの漫画版で、大討伐編の裏に潜む教団〈夢神の尖兵〉と、その一員だったA級冒険者「黒き炎刃」カロスを考察します。
教団の教義と目的、カロスの過去と強さ、エルマのゲーム知識に「夢神」はあったのかを原作から整理し、禁断の大森林で教団が何を狙うのか、黒幕は誰なのかを予想します。
大討伐編の全体像や北方貴族会談の流れについては『追放された転生重騎士 172話考察|禁断の大森林の大討伐編を原作から読み解く』で整理しているので、この記事では教団とカロスの掘り下げに絞ります。
この記事には漫画版12巻までの展開と、なろう版原作第三章・第四章のネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
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夢神の尖兵とは|カロスが明かした教義と創造神アルザロス
〈夢神の尖兵〉は、なろう版原作の第三章のタイトルにもなっている謎の教団です。
講談社から出ている原作小説第4巻の紹介文でも、カロスは「謎の組織<夢神の尖兵>の一員」と書かれています。
教団の名前が初めて本人の口から語られるのは、原作第三章第三十一話「ウラギリモノ」です。
正体を見破られたカロスは、創造神アルザロスがこの世界の不条理と悲劇を嘆き、神々が生んだ人間を消し去って世界を無に帰すことを選んだと語ります。
そして、自分たち〈夢神の尖兵〉はその手伝いをすることで、この世界から永遠に不条理と悲劇を取り除きたいのだと続けます。
その手段が、〈夢の穴〉の最悪の災害である〈夢壊〉です。
カロスは襟を引き裂き、胸元に彫られた刺青を見せます。
鎖で縛られた人間のような化け物の図柄で、エルマは神々に封じられたアルザロスの姿を聖典の記述から再現したものだろうと推測しています。
つまり〈夢神の尖兵〉の「夢神」とは、眠りながら悪夢を見続けるアルザロスのことだと読むのが自然です。
教団は、そのアルザロスの意思を代行する「尖兵」を名乗っているわけです。
ただし、エルマはこの演説そのものに空虚さを感じています。
人から聞いた話をそのまま話しているようだと感じ、カロス個人は教義よりも、全てを手にした自分の強さを活かせる最後の目標が欲しかっただけだと見抜きます。
教団の教義が本物の信仰なのか、構成員を動かすための看板なのかは、この時点ではまだ分かりません。
「夢神」はエルマのゲーム知識にあったのか|マジックワールドのアルザロス設定
ここで気になるのが、エルマが前世で遊んだ〈マジックワールド〉に「夢神」に当たる存在がいたのかという点です。
答えは、神そのものはいた、です。
原作第一章第十九話「〈夢の穴〉」で、エルマは〈マジックワールド〉における〈夢の穴〉を「眠れる神アルザロスの見る悪夢」だと説明しています。
アルザロスは想像を現実にする創造の神で、神々と世界を生み出したものの、永い時間の中で正気を失い、自らが生んだ神々に封印されたという設定です。
封印されてもなおその悪夢は現実に影響を与え、魔物を生み出す門として〈夢の穴〉を作り出すとされています。
カロスの刺青の「鎖で縛られた化け物」は、このゲーム設定の「封印された創造神」とぴたりと重なります。
一方で、アルザロスを崇めて〈夢壊〉を起こそうとする教団については、エルマのゲーム知識に該当するものが出てきません。
原作第二章でカロスから魔物災害の頻発を聞かされたとき、エルマは〈マジックワールド〉時代の仕様やイベントにも一切心当たりがないと考えています。
第三章で教団の存在を知ったあとも、エルマはこの組織を「この世界にとって異物」と表現しています。
整理すると、神話の土台はゲームと共通なのに、その神話を利用する組織だけがゲームに存在しないという構図です。
ゲームでは背景設定にすぎなかった創造神の物語を、この世界の誰かが「教義」に作り替えて動いている、と言い換えることもできます。
ゲームの仕組みとこの世界の違いについては、『追放された転生重騎士 世界観・設定まとめ|重騎士と加護の儀を解説』もあわせて参考にしてください。
夢神の尖兵の暗躍まとめ|トラペゾヘドロンから水没した理想都まで
教団の活動は、カロスの正体が明かされる前から少しずつ描かれていました。
原作の描写を時系列で並べると、次のようになります。
最初の手口は、〈嘆きの墓所〉に埋められていた〈哀哭するトラペゾヘドロン〉です。
闇属性のマナと魔物の魂を合成して結晶化させた、市場価値二千五百万ゴルドの強力な魔石で、エルマは最低でも十個以上がばら撒かれていると見積もり、犯人は二億ゴルド相当を投じたことになると驚いています。
二つ目は、大規模依頼の地図の改竄です。
各班に渡された地図は正規ルートだけが正確で、それ以外の道はでたらめになっており、ボスの〈王の彷徨〉が起きたときに冒険者が逃げられないよう仕組まれていました。
この依頼の段取りをほぼ一人で決めていたギルド職員は、事件後に行方不明になっています。
教団はギルドの内側にまで協力者を置いていた可能性が高いということです。
三つ目は、ハウルロッド侯爵家への疑いの誘導です。
カロスは事件のあと、犯人はハウルロッド侯爵家かその一派だとエルマに吹き込み、さらにスノウの暗殺未遂事件を起こして侯爵家の内部抗争を匂わせました。
原作のエルマは、カロスがスノウの生死にはまったく関心がなく、目的は疑いの矛先を逸らすことだったと振り返っています。
そして四つ目が、〈水没した理想都〉の大規模依頼で再び冒険者を集め、〈夢壊〉を起こそうとした計画です。
漫画版では、10巻で侯爵家の密令を受けたエルマたちが黒幕探しの大規模依頼に出陣し、11巻で裏切り者が紛れた〈水没した理想郷〉の攻略、12巻で本性を現したカロスとの総力戦が描かれていると講談社の単行本紹介文から確認できます。
漫画版の紹介文では地名が〈水没した理想郷〉と表記されているため、細部の表記は原作と違う可能性があります。
黒き炎刃カロスの人物像|善人の顔と村八分にされた過去
アニメ公式サイトでは、カロスは「黒き炎刃」の二つ名を持つクラス魔剣士のA級冒険者と紹介されており、声を担当するのは河西健吾さんです。
原作でのカロスの初登場は第二章第二十九話「〈黒き炎刃〉」で、決闘でヒルデから大金を巻き上げたエルマのもとに、師匠として話をつけに現れます。
ところがカロスはエルマの言い分を聞くと、拳骨でヒルデを叱りつけ、自分の不行き届きだとエルマに頭を下げます。
エルマが「善人過ぎて居心地が悪くなってきた」と感じるほどの好人物として描かれているのが、この登場シーンの巧みなところです。
直後の酒場の場面では、ラコリナで続く不自然な魔物災害を独自に調べていると打ち明け、この世界の人間の生息圏が縮みかねないと語るエルマに同意してみせます。
読み返すと、異変を調べる正義の冒険者という役割そのものが、教団の工作を隠すための最高の隠れ蓑だったことが分かります。
正体が明かされたあと、原作ではカロスの過去も語られます。
貧しい街の下級冒険者だったカロスは、パーティーとの対立を重ねた末に、探索中の窃盗の冤罪を着せられ、ギルドぐるみで村八分にされました。
拠点を移しても田舎者として食い物にされ、自分には冒険者としての才能が欠けていると認めざるを得なかったといいます。
そんなときに出会ったのが「あの御方」と呼ばれる男で、君には英雄になれる器がある、私には君の力が必要だと声をかけられます。
カロスは、それが燻っている人間を操り人形にするための甘い言葉だと分かっていながら、初めて必要とされた嬉しさから縋ってしまったと語ります。
最後にカロスは、エルマを「何一つ恥じることなく、あるがまま理想の通りに生きている」と羨み、あの御方を裏切れば自分は何者でもなくなるとして、情報を守るために自ら命を絶ちました。
弟子のヒルデへの接し方まで演技だったのかどうかは、原作でもはっきりとは書かれていません。
カロスの強さ|毒ゾンビ型魔剣士ビルドと「技量の欠落」
漫画版12巻の紹介文が「凶悪ビルドの魔剣士」と表現しているとおり、カロスの強さの正体はキャラビルドにあります。
原作で明かされた構成は、魔剣士専用の〈魔人の剣戟〉、毒ダメージを回復に変える特性スキル〈毒ダメージ反転〉を含む〈ポイゾウーズの心〉、そして回復スキル〈祝福の聖歌〉を持つ〈彫像の天使〉の三つのスキルツリーです。
そこに、自分を猛毒状態にする〈黒縄剣ゲヘナ〉と、毒ダメージを二倍にする〈苦痛の首飾り〉を組み合わせます。
受けるはずの毒ダメージがそのまま回復に変わり、さらに状態異常のときに身体能力が上がる〈窮鼠獣殺〉で攻撃力まで跳ね上がるという仕組みです。
エルマはこれを、〈マジックワールド〉で忌み嫌われていた対人最強格の「毒ゾンビ型魔剣士」だと見抜き、たまたま似たのではなくゲームと完全に同じ形だろうと考えています。
ところが原作のエルマは、戦いの序盤でカロスの剣筋の粗さにも気付いています。
レベルが一回り上のはずのカロスの斬撃を、エルマは〈パリィ〉で捌き続けることができ、カロスは追い込まれると消耗の激しいスキルを連打するばかりでした。
エルマはこれを、技量とレベルが明らかに乖離していると表現しています。
つまりカロスは、「雑にスキルを連打するだけで他者を圧倒できる」完成済みのビルドを持ちながら、それを使いこなす腕は持っていなかったのです。
エルマ側がこのビルドをどう崩したのかというスキルの詳細は、『追放された転生重騎士
エルマのスキル考察|死線の暴竜コンボが格上を倒す理由』で解説しています。
なお、原作ではカロスを倒したことでエルマのレベルは75から80に上がっています。
独自考察|夢神の尖兵は「追放された者」を拾い、ビルドを配る組織
ここからは筆者の考察です。
カロスの過去と強さを並べると、〈夢神の尖兵〉という組織の性格が見えてくると考えています。
一つ目のポイントは、カロスもまた「追放された者」だったことです。
この作品は、加護の儀で重騎士を引いて家を追われたエルマと、元のパーティーを追われたルーチェの物語として始まりました。
カロスは冤罪でギルドから村八分にされ、居場所を失ったところを「あの御方」に拾われています。
エルマとカロスの違いは、追放されたときに手元にあったものが、前世のゲーム知識だったか、他人からの甘い言葉だったかという一点にすぎません。
筆者は、〈夢神の尖兵〉はこの世界の不条理で居場所を失った人間を選んで拾い上げる組織であり、カロスはその典型だったのではないかと見ています。
「世界の不条理と悲劇を取り除く」という教義が、追放された人間の心に刺さるように作られているのも、そう考えると納得がいきます。
二つ目のポイントは、技量のないカロスが、ゲームと完全に同じ対人最強ビルドを持っていたことです。
エルマは、この世界では命に限りがあり、貴族間のしがらみも多いため、キャラビルドの開拓は進んでいないと考えていました。
才能がないと自覚していた下級冒険者が、自力で毒ゾンビ型の構成にたどり着いたとは考えにくいでしょう。
そうであれば、ビルドは「あの御方」の側から与えられたものだと考えるのが自然です。
原作のハーデン侯爵も、王国が多大な犠牲を払って開拓してきた加護の神秘を上回る情報量を持つ無名の教団はどこから湧いて出てきたのかと、エルマに問いかけています。
筆者の見立てでは、〈夢神の尖兵〉はゲームの攻略情報にあたる知識を持つ誰かが、居場所のない人間に完成済みのビルドを配り、手駒として動かしている組織です。
エルマが「知識」と「自分の腕」の両方で戦う転生者だとすれば、カロスは「知識だけを外から注がれた」もう一人のエルマだったと言えます。
カロスがエルマを最初から自分と正反対だと感じていたのは、まさにこの差だったのではないでしょうか。
大討伐編の黒幕は誰か|「あの御方」と禁断の大森林で教団が狙うもの
では、大討伐編の黒幕は誰なのでしょうか。
原作で名前の出ている手掛かりは「あの御方」という呼び名だけで、カロスが男と表現していること以外は何も分かっていません。
なろう版は第四章の途中で更新が止まっているため、黒幕の正体は原作でも未確定です。
そのうえで、黒幕の候補は三つに絞れると考えています。
一つ目は、ハーデン侯爵が挙げた他国の機関や、王国内の悪徳貴族の子飼いの組織です。
二つ目は、ハーデン侯爵自身が口にした「吾輩の知見が全く及ばん、得体の知れん何か」で、エルマはこの言葉に背筋が冷えるのを感じ、自分と同じ転生者が関わっている可能性を疑っています。
三つ目は、この二つが組み合わさった形、つまりゲーム知識を持つ人物が権力者の後ろ盾を得ている形です。
トラペゾヘドロンに二億ゴルド相当を投じる資金力と、ギルド職員を動かす人脈を考えると、筆者は三つ目が最も筋が通ると見ています。
では、禁断の大森林で教団は何を狙うのでしょうか。
ヒントは、原作第三章でエルマが整理したカロスの手口にあります。
〈夢の主〉を二段階目まで存在進化させて〈夢壊〉を起こすには、大量の高レベル冒険者を生贄にする必要があり、その手段が大規模依頼でした。
漫画版19巻の紹介文によれば、禁断の大森林の大討伐は100人を超える冒険者が集まる作戦です。
これは教団にとって、自分たちで依頼を仕立てなくても高レベル冒険者が勝手に集まってくる、これ以上ない舞台だと言えます。
北方貴族は教団の正体を暴くために大討伐を利用しようとしていますが、教団の側も同じ大討伐を生贄集めに利用しようとしている、という読み合いになるのではないでしょうか。
さらに筆者が気になっているのは、エドヴァン伯爵家の部隊が外部の冒険者で戦力を埋める寄せ集めになりやすいという点です。
カロスがギルドの信用を隠れ蓑にしたように、次の刺客も「頼れる上級冒険者」の顔で部隊に紛れ込む可能性は十分にあります。
そしてその刺客が、カロスと同じくゲーム由来のビルドを配られた人物であれば、それを見抜けるのは〈マジックワールド〉を知るエルマだけです。
大討伐編は、エルマが教団の「配られた知識」と正面からぶつかる章になると予想しています。
この記事の内容は、小説家になろう掲載の原作『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』第一章から第四章、講談社の漫画版単行本の紹介文と原作小説第4巻の紹介文、TVアニメ「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する」公式サイトのキャラクター・キャスト情報をもとに確認しています。
漫画版でカロスの過去や教団の描写が原作と同じ形かどうかは、単行本12巻の本編で確認してください。
まとめ|夢神の尖兵は追放された者に知識を配る、エルマの影
〈夢神の尖兵〉は、封印された創造神アルザロスの意思を代行すると称し、〈夢壊〉によって世界を無に帰そうとする教団です。
アルザロスの神話はエルマのゲーム知識にもありましたが、それを利用する教団はゲームに存在せず、エルマにとっても未知の存在です。
「黒き炎刃」カロスは、善人の顔で魔物災害の調査役を演じながら、魔石のばら撒き、地図の改竄、侯爵家への疑いの誘導を重ね、最後は情報を守って自ら命を絶ちました。
ゲームと同じ毒ゾンビ型魔剣士のビルドを持ちながら技量が伴わなかった点から、筆者は教団が追放された者を拾ってビルドを配る組織だと考えています。
100人規模の大討伐は、北方貴族にとっては教団を暴く戦いであり、教団にとっては生贄が集まる舞台でもあるはずです。
大討伐編でエルマが配属されるエドヴァン伯爵家の部隊と父アイザスの思惑については、「追放された転生重騎士
エドヴァン家考察|父アイザスの真意とマリスとの決闘」もあわせて読んでみてください。
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