追放された転生重騎士 エルマ考察|ワンライフなのに格上へ踏み込む理由

その他作品考察

『追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』の主人公エルマ・エドヴァンは、格上の魔物にあえて踏み込み続ける人物です。

その姿を「ここで踏み込むのが冒険者だよな」と肯定する声もあれば、ワンライフの世界で危なっかしすぎると感じる声もあります。

この記事では、前世で〈マジックワールド〉をやり込んだゲーマーとしてのエルマの判断基準と、その危うさを原作小説の言動から考察します。

なお、エルマを含む主要キャラクターの立ち位置については『転生重騎士はゲーム知識で無双する 登場人物・キャラ4人を解説』で詳しくまとめています。

本文は原作小説第一章・第二章の内容に触れるため、ネタバレ注意です。

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双するをコマで読み返すなら
ここで書いた読み方を頭に入れて読み返すと、同じ場面でも見えてくるものが変わります。DMMブックスなら試し読みから電子で読めます。

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双するをDMMブックスで読む

エルマの原点は「やり直しの利かない一度きりの勝負」という感覚

エルマの人物像を考えるうえで、最初に押さえておきたいのが〈加護の儀〉の場面です。

原作第一章第一話で、エルマは〈ステータス〉を見た瞬間に、この世界が前世で一日二十時間を費やした日もあるほどやり込んだゲームと同じだと気づきます。

そして重騎士を引いたとき、エルマが感じたのは落胆ではなく勝利の確信でした。

このときエルマは、〈加護の儀〉を「やり直しの利かない一度きりの勝負」と捉えています。

つまりエルマは転生した最初の瞬間から、この世界をリセットのきかないゲームとして見ていたわけです。

重騎士の評価がなぜこれほど食い違うのか、スキルの仕組みについては『追放された転生重騎士 エルマのスキル考察|死線の暴竜コンボが格上を倒す理由』で解説しているので、ここではエルマという人間の考え方に絞ります。

追放されても恨み言を言わないエルマ|「しんみりタイム終わり」の切り替え

父アイザスに殴り倒され、僅かな金だけで館を追い出された直後のエルマは、驚くほど前向きです。

原作第二話では、前世の記憶が戻った自分には貴族の暮らしはごめんで、自由に旅をしながら生きる方が気楽だと考えています。

それどころか、重騎士の検証を周囲の目を気にせずできるのだから、ちょうどいいとまで言い切ります。

割り切れない気持ちがあることも認めたうえで、自分の頬を打って「しんみりタイム」を終わらせる場面は、エルマの性格がよく出ている場面です。

ただ、エルマは本当に何も感じていなかったわけではありません。

第一章のエピローグでは、気にしていないと言いながら心のどこかで常に引っ掛かっていたと振り返っています。

恨み言を言わないのは、傷ついていないからではなく、恨みに時間を使うよりも次の一手に使う方が得だと判断しているからだと筆者は読んでいます。

父との関係の決着については『追放された転生重騎士 エドヴァン家考察|父アイザスの真意とマリスとの決闘』で詳しく書いています。

格上に踏み込む理由|エルマは「勝てない相手じゃない」と計算してから前に出る

エルマが無謀に見える場面の原型は、原作第一章第四話のアランダエイプ戦です。

レベル8のエルマの前に、レベル16の魔物が現れます。

同行していたアレスは無茶だと叫びますが、エルマは前世の知識を総動員して、勝てない相手じゃないと結論を出したうえで前に出ています。

ここで大事なのは、踏み込む前に計算が終わっている点です。

エルマは相手のレベルから残りのステータスを割り出し、そのとき手元にあったスキルポイントで〈ディザーム〉を取得してから挑んでいます。

一方で、同じ場面のエルマは「こういうときが一番燃える」とも口にしています。

レイドクエストでマッドヘッドと対峙したときも、自分の実力を限界まで問われる状況で燃えない奴は男じゃないと、頬が緩んでいました。

つまりエルマの踏み込みは、計算と高揚の両方でできています。

計算の部分だけを見れば合理的ですが、高揚の部分は明らかに前世のゲーマーのものです。

ファンの間で評価が割れるのは、この二つが同じ顔をして並んでいるからだと筆者は考えています。

エルマのゲーマー気質|効率とビルドで考え、仲間の命は確率で片付けない

エルマの判断基準を一言でいえば、効率です。

アレスにパーティーに誘われたときも、仲間を連れると経験値が分散されて美味しくないという理由で断っています。

スキルポイントは〈重鎧の誓い〉に全振りし、冒険者ランクも〈重鎧の誓い〉へのポイント上限を外すために早く上げたいと考えるなど、行動のほとんどがビルドから逆算されています。

ところが、エルマは他人の命についてだけは、効率や確率で片付けません。

レイドクエストの直前、エルマは全員生還できる確率を八割ほどと見積もり、ゲームなら充分な数字でも、これは現実だと考えています。

そのうえで、監督役のゴウタンに逃げるときの基準や合図を詰めるよう進言しました。

自分のレベル上げでは格上を狙う一方で、他人を巻き込む場面では撤退の段取りを先に気にする。

このギャップこそ、エルマの判断基準の核だと筆者は見ています。

ラコリナで知識を人に売らない理由も、同じ線の上にあります。

原作のエルマは、ルーチェに冒険者のスキル相談をすれば大成功すると言われても、絶対にしないと断言しました。

前世のクラスアドバイザーが恨みを買って引退していったこと、この世界では恨みの重さが比べものにならないことを知っているからです。

この場面の詳しい流れは『追放された転生重騎士 アニメ13話考察|ラコリナ編と1億ゴルドの使い道』で扱っています。

金銭感覚のズレとルーチェのツッコミ|無双主人公の人間くささ

エルマの人間くささが一番出るのは、お金とルーチェが絡む場面です。

ルーチェを仲間に誘った直後、自分の実力不足を打ち明けるルーチェに対して、エルマは次の探索で三千万ゴルド稼いでレベル30まで持っていくと宣言します。

ルーチェの返事は「アタシの話聞いてましたかぁ!?」でした。

〈天使の玩具箱〉の報酬を分けるときも、エルマは幸運担当の取り分を多くするのが〈マジックワールド〉での相場だとして、ルーチェ八、自分二という配分を大真面目に提案しています。

ルーチェはどの界隈の話なのかと机を叩いて反論しますが、エルマは内心でも、ドロップ率への影響を考えればこのくらいが適正だと考えたままです。

エルマの金銭感覚がズレているのは、お金を生活費ではなく、ビルドを完成させるための資源として見ているからでしょう。

そして相場の基準が、この世界ではなく前世のゲームのプレイヤー間にあります。

ただし、エルマはツッコまれる側に回るだけではありません。

成金ラーナを百でも千でも狩りましょうと張り切るルーチェには、そんなに狩ったら街の物価がとんでもないことになると返しています。

無双系主人公なのに、ズレては指摘され、時には自分も指摘する。

この掛け合いがあるからこそ、エルマは「知識で全部解決する人」ではなく、知識の物差しがこの世界とずれている人として描かれていると感じます。

独自考察|エルマはこの世界を「ワンライフのハードコアモード」として遊んでいる

ここからは筆者の考察です。

ゲームには、死んだらキャラクターが消えて二度と使えなくなる、いわゆるハードコアモードと呼ばれる遊び方があります。

エルマの振る舞いは、このハードコアモードを遊ぶゲーマーの姿にかなり近いと考えています。

根拠の一つは、エルマ自身が「ゲーム感覚」を少しずつ修正していることです。

序盤のエルマは、ハイリスク・ハイリターンを前世と同じ感覚で楽しんでいました。

ところが成金ラーナを狙う場面では、マッドヘッド戦でゲームなら余裕で避けられたはずの攻撃がギリギリだったことを振り返り、最効率で動けば可能なはずだという考え方は盲信しない方がいいと自分を戒めています。

エンブリオ戦では、他に手がなかったとはいえ、命をチップに博打を打つような戦法を取るべきではなかったのかもしれないと悔やみました。

デスアームドを倒したあとも、流れ弾のような攻撃で簡単に死ぬのは心臓に悪いとこぼしています。

ハードコアモードの上級者は、通常モードより慎重になります。

エルマは踏み込むたびに、ゲームの確率と現実の体の差を思い知り、少しずつ通常モードの癖を抜いているように見えます。

もう一つの根拠は、エルマが自分の命と仲間の命を分けて扱っていることです。

エンブリオ戦で一度きりの秘策に賭けるとき、エルマはルーチェに手を貸してほしいと頼みつつ、駄目なら今度こそ逃げてくれと選択肢を残しました。

成金ラーナ狩りでも、知識の優位からああしろこうしろと命じれば父親やクラインと同じだと考え、ルーチェの意思を尊重しようとしています。

自分のキャラクターは賭けてもいいが、他人のキャラクターを勝手に賭けてはいけない。

これはオンラインゲームでパーティーを組むプレイヤーのマナーに近い感覚です。

エルマの踏み込みが「無謀」と「冒険者らしさ」の間で揺れて見えるのは、この線引きが外からは見えにくいからだと筆者は考えています。

そして、エルマがこの世界を「ゲームだと思っている」とは筆者は考えていません。

むしろ、ゲームでは得られなかった一度きりの緊張を、誰よりも真剣に味わっているプレイヤーなのだと思います。

前世でメインキャラを捨ててまで重騎士を育てた人間が、今度は自分の人生そのものを一本のキャラとして育てている、という見方もできるでしょう。

エルマの判断はアリかナシか|ルーチェの「冒険者って安全ばっかり求めるものじゃない」

では、格上に踏み込み続けるエルマの判断はアリなのでしょうか。

筆者は、計算が先にある踏み込みはアリ、高揚に引っ張られた踏み込みは危うい、と分けて考えています。

この問いに作中で一番近い答えを出しているのは、ルーチェかもしれません。

デスアームド討伐のあと、ここで存在進化が起きるはずがなかったと謝るエルマに対して、ルーチェは元より冒険者は安全ばかり求めてやるものではないとフォローしています。

一方でエルマ自身は、〈不惜身命〉を今のステータスで積極的に使いたいスキルではないと振り返っています。

肯定する仲間と、自分を戒める本人。

この二人の温度差があるからこそ、エルマの踏み込みは無謀なだけの突撃にならず、毎回反省とセットで描かれているのだと思います。

アニメで同じ論点が話題になった回については、第15話のボス挑戦を扱った『追放された転生重騎士 アニメ15話考察|ロックセンチピード存在進化の黒幕は誰か』と、第16話の決着を扱った『追放された転生重騎士 アニメ16話考察|不惜身命でエルマが防御を捨てた理由』も参考になります。

なお、エルマの言動や心情は小説家になろう版『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』第一章・第二章の本文、キャラクター紹介はTVアニメ公式サイト(TVアニメ「追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する」公式サイト)をもとに確認しています。

漫画版での描かれ方は、講談社のコミックスやコミックDAYSで本編を確認してください。

まとめ|エルマは計算と高揚の両方で格上に踏み込む重騎士

エルマ・エドヴァンは、転生した瞬間からこの世界を「やり直しの利かない一度きりの勝負」として見てきた主人公です。

追放されても恨み言を言わないのは、傷ついていないからではなく、次の一手に時間を使う方を選んでいるからでした。

格上に踏み込むときは必ず計算が先にありますが、そこに前世のゲーマーとしての高揚が混ざっていることも、エルマ自身が隠していません。

効率とビルドで考える一方で、他人の命だけは確率で片付けず、仲間には逃げる選択肢を残す。

筆者は、エルマをこの世界を「ワンライフのハードコアモード」として真剣に遊んでいるプレイヤーだと考えています。

エルマが前世でやり込んだゲームそのものについては、『追放された転生重騎士 マジックワールド考察|この世界はゲームそのものなのか』もあわせて読んでみてください。

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双するをコマで読み返すなら
ここで書いた読み方を頭に入れて読み返すと、同じ場面でも見えてくるものが変わります。DMMブックスなら試し読みから電子で読めます。

追放された転生重騎士はゲーム知識で無双するをDMMブックスで読む

※本記事はアフィリエイト広告を含みます

コメント

タイトルとURLをコピーしました